SPEC結 爻ノ篇(ネタバレあり) [映画]

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映画好きとしてマラヴィータも悪の法則もスルーってどうなのよ。
そんなツッコミを自分に入れながら観た、SPEC劇場版後編。

ざっくり言ってしまえば全て、皆さんの予想通りです。
予想に反することがあるとすれば、バナナいっけいの早々の退場と
堀北真希の無駄遣い、これに尽きるでしょう。
まあ、なんだ。
あと一ヶ月撮影が遅かったら絶対半沢出してただろ、堤よ。

さて、そんな最終決戦。
気付けば人間vsSPECホルダーの戦いの筈が、
神(向井&優子)vsSPECホルダーの戦いに転じていた。
ちなみにこの時、瀬文はスケキヨと化していた

欲望のままに同じ種族を殺す人間を愚かだと思い、
人間が核爆弾のボタンを押す度にこの世界をリセットしてきたセカイ。
人間の絶望的な側面しか見えないセカイに対し、
自分の仲間は違うと言い返す当麻。
封印していた自分のSPEC=死者を呼び戻す力を使い、
ニノマエ、冷泉、マダム陰やサトリ達の力を借りる。

しかし、人間の所作を億単位で見守って来たセカイにとって、
彼らの抵抗はおよそささやかなものに過ぎなかった。

ニノマエや冷泉達をあっさり“消し”、さらに
自分と同じ存在である筈の潤すら、自分を裏切ったとして
産みの親である里子と一緒に“消し”てしまう。
人間の愛情というものが分からないセカイに対し、
目の前で大切な人間達を“消され”た当麻は強い憤りを覚える。
……ここまでスケキヨ(瀬文)の登場シーンは皆無。

*****
ケイゾクとはテイストが似ていながらも全く別物、としていた本作が
この劇場版を通して改めてその立場を明確化させたこと。
ここに賛同を覚えるか拒否を覚えるかで、
観客の反応はがらりと変わると思う。
特にSPEC開始直後に“『非』常識的な力を持った人々による犯罪”に対して
拒否感を覚えていた人々、それでも
ケイゾクのチームだから多少のケイゾクっぽさを求めて
頑張ってSPECを見てきた人は、きっとこのオチにげんなりすることだと思う。

個人的に何を思ったかって言うと、あれだ。
エヴァ劇場版
破滅する→やり直し→でもまた同じEDを迎える→やり直しっていうパターンは
まさに現在進行中のエヴァ劇場版みたいな感じだが、
大きく違う点としては、当麻はシンジの要素=世界を滅ぼす鍵でありながらも、
『自分』という主体を忘れなかったってことか。
それとも、当麻としての“人生”を送る前の彼女は、
主体性を持たないただの鍵だったんだろうか。
……庵野、この映画観てたら作り辛ぇだろうな。エヴァ次作。[たらーっ(汗)]

全体的には色んな伏線をきれいにまとめていたな、と。
あとほんの一瞬だけれど、
当麻&陽太(ニノマエ)の姉弟っぽい場面があり、満足した。
しかし、瀬文は当初筋肉バカの能面顔だったのが、
当麻と接するようになってよく感情を出すようになりましたな。
オチの瀬文の笑顔に¥1200を支払ったと言っても過言ではございません(キモい)。
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SPEC結 漸ノ篇(ネタバレあり) [映画]

地獄でなぜ悪いとか観に行ってたけど、
気付けば仕事と研修とパズドラ三昧の日々ですっかり記録し忘れてた。
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てなわけで久々のSPEC。にして、完結編。
このドラマを見た人は多分、八割方ケイゾクも見てる層だと思うけれど、
個人的にはこのメイン二人。ケイゾクの柴田真山コンビより好きです。
ケンカが容赦ないのがいい。
でもって、クールだけどちゃんと信頼関係で結ばれてるのがいい。
マジで理想の男女関係です。
流石クールさに定評のあるTBS。クール西荻。
ただ女が守られるだけのベタな話は書きません。

どっかのお台場テレビとは大違いです(超毒舌)。
いや、だって大体どのドラマやっても無理やり恋愛要素ねじ込んでくるじゃんよ…
主人公の性別改編してまでやるか?って位にさ。

で、内容。
「ファティマ第三の予言」とか「世界の終わり」とか
前回の天から楽しそうなワードが満載だったけれど、まあなんだ。
やっぱり野々村が死んだだけで終わりましたな。
やっぱり刑事魂と定年という二つのワードを兼ね備える人間にはフラグが立つのか、
思えば歴代の刑事ドラマの中で、
上記のワードを抱えたまま平穏無事に退職した刑事って居たっけ?
そんなこと考えながら、やっぱりこれだけは言わせて頂きたい。

相棒脚本家は西荻を見習うべきです。 と言うか、三浦さんに謝れ(泣)。

さて、今回の映画の要である『セカイ』と『白い女』ですが、
「人間=蟻」とみなす神のような存在らしいす。
正直、この前篇を観てもこの二人の目的がいまいち分からんです。
「返してもらう」とか言ってたので、まあ人間の手に渡った神の権限を取り戻すとか、
この世界をトリモロス!とかそういうことなんでしょうな。

とりあえず、天から言われてるSPECホルダーを持つ者を消す「シンプルプラン」。
それを実行に移すか否かで国レベルで揉めているという現状。
当麻は自分がSPECホルダーの一員でありながら、
自分の力=死者を呼び戻す力に取り込まれそうになる自分を恐れている。
対して瀬文は当麻に対し、当麻がSPEC持ちであろうがそうでなかろうが、
当麻は仲間なので守ると言う。
体を張って当麻を守った野々村。
フリーズドライ状態から帰還した吉川。
餃子丼を頬張る馬場ちゃん達に、
謎のバナナ医者。

ドラマ版SPECを観ている人間なら楽しめると思う。
でも、ドラマ版を全く観ていない人間にとっては「何じゃこりゃ」でしょうな。
個人的には面白かったし後編も気になるけれど、
あのSPECホルダー勢揃いの図&妖怪大戦争みたいな予告が若干の恐怖。
で、一部考察さんが予測しているパラレルワールドオチなんて来たら、
SPドラマ零のアナウンサー並の良い発音でS*IT!と叫ぶことでしょう。
でも、ちゃんと完結させてくれるならそれでいい。

だらだら終わりを引き延ばされてるTRICKよりは、遥かに良いさ。
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タリウム少女の毒殺日記(ネタバレあり) [映画]

そう言えば、このテの映画って
少女×ポップは成り立つけれど少年×ポップって成り立たんよね。
そんなどうでも良いことを考えながら、
公開一カ月目にして気になっていた同作を観賞。
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内容としては、
数年前に実の母親をタリウムで毒殺しようとした少女…
をモチーフにした、あくまでフィクションの少女の話。

「観察するぞ」
「観察するぞ」
「観察するぞ」
動物、微生物、ヒト。そして自分自身でさえも客観視してしまう主人公は、
母親に少しずつタリウムを投与し、その状況をブログ&動画で公開している。
ヒトの営みは、生まれてくる前に定められたプログラムによって全て決められている。
そう思っている少女は、他者の人生に対しても、
自分自身の人生に対してすら興味を覚えない。
ただあるのは『観察する』という行為のみ。

自分とは正反対の母親。
生に執着すると同時に性にも執着する彼女を、
主人公は、まるで解剖したカエルの臓器を眺めるかのような
冷静な視点で『観察』していく。

学校ではいじめを受け、
アダルト系のサイトにその映像を垂れ流されながらも、
ホルマリン漬けにした金魚のように、自分自身すら客観視する彼女。

そんな彼女の前に、一人の少年が現れる。
黒いランドセルを背負い、その横に防犯ブザーをぶら下げた裕福そうな少年に、
彼女は接触する。

その瞬間、彼女の中でプログラム(=彼女の人生)のアップデートが行われる。

*****
元ネタが元ネタだけに、
相当ドキュメンタリータッチが強いとキツイ映画なんだろうなと思ったら、
意外とかなりポップな仕上がりになっていた。
(ちなみに予告編は未見で観に行ったクチ)
例としては、主人公自身の外見を模したアバターの他に、
『踊ってみた』『チルノのパーフェクトさんすう教室』などを盛り込む程度。
まさか大画面でチルノを観る羽目になるとは思ってなかったし。

で、映画の内容について。
「観察するぞ」という主人公の言葉通り、
冒頭からいきなりカエルの解剖から始まったこの映画は、中盤まで
殆ど一切の主観を入れないで淡々と役者や風景を『観察』していく。
主人公が金魚をホルマリン漬けにする場面然り、
主人公が母親の皮膚に生じた異変を観察する場面然り、
主人公がクラスメイト達からいじめを受ける場面、
あるいは男性教師から性的な好奇心を向けられる場面、然り。

こういう類の映画って、どこかしらに監督の主観が入ってキモチワルクなるものなので、
淡々と映像を撮りこなしていく今作に実に好感が持てた。
だからこそ、ラストの主人公がタリウム投与を止める場面。
あれが理解出来なかった。

で、幸いなことに監督にQ&Aを聞く機会があったので、
その辺のことを聞いてみた。
で、やっぱりこの質問が一番多いらしい。

「主人公が母親殺しを止めたのは、プログラムに従って生きることを放棄したから。
このままタリウムを投与すれば、いずれ母親が死ぬということは分かりきっている。
そんな分かりきったことをするなんて、面白くない。
他にも選択肢があるよということを、彼女は自分自身の人生をアップデートさせることで
身につけることが出来た」

大体こんなコメントだったと思う。
個人的にそのコメントは100%納得のいくものだったが、
主人公がボディピアスの姉ちゃんとチャリニケツで爆走
このオチから監督の真意を汲み取れって言われても、正直無理っすよ(涙)。

てなワケで、
監督の注釈が無ければ☆2、注釈つきで☆4の映画でございます。
なんか色々と勿体ない作品だったなあ……
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風立ちぬ(ネタバレあり) [映画]

公開初日の土曜ということもあり、
さぞかし家族連れが多いんだろう…とか思いきや、
客層のほとんどは成人男子でした。

事前情報から飛行機マニアには堪らん内容と聞いていたこともあり、
来ていた年齢層もぱっと見二十代後半~三十代前後くらい?
たまたま隣のシートに座ったのが父娘ペアだったけれど、
娘っこ、始終退屈そうにポップコーンぽりぽりしてたし。

さて、肝心の内容…の前に例の主人公の庵野声だけど、
そんな違和感無かった。
ちなみに主人公の堀越二郎はこんなん↓
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幼少期(声変わり前)は自前の飛行機を乗り回し、
周囲の女子どもの黄色い歓声を浴びながらも、ガキ大将を背負い投げする猛者であった。
そんなハイスペック少年が『近眼』というコンプレックスを元に、
飛行操縦士→飛行機の設計士へと転身したことにより、彼の内に秘めたオタク要素が大爆発。

結果として爽やかイケメンの風貌でありながら、口を開けばもろにオタク、という
ジブリでも類を見ないタイプの主人公が出来上がる。
個人的に駿が庵野を起用したのは、
ジブリの爽やか絵では表現出来なかったオタク要素を声で補填したのではなかろうか。
これ↑観た方ならきっと賛同して下さると思う。
一応言っておくが、基本的に庵野除いた他の役者声優は非常に上手い。
ヒロイン瀧本、二代目ムスカ、じゃない、服部役の國村の演技も素晴らしかったが、
西島すげえうめえ。
こんなにうまいなら、なんで大河のしゃがれ声があんな……いや、何でもないっす(自重)。

さて、内容に関して言うと、
堀越二郎という人物史に堀辰雄の恋愛小説『風立ちぬ』をミックスさせた形。
非常に乱暴な言い方をすると、
設計図と野郎に囲まれた職場で日々過ごす主人公が美女をゲットする話(笑)。
そこに駿なりの『戦争』に対する解釈、戦争に参加した一般人に対する解釈が刻まれる。

二郎は戦闘機(零戦)を作った人物ではあるけれど、敵国との戦争を望んだのではなく、
純粋に技術者として貧乏な日本で大好きな飛行機を作りたかった。
本当は戦闘機ではなく、客を乗せて飛ぶような輸送型の飛行機も作りたかったが、
時代がそれを許さず、夢を見るのみに留めている。
この二郎と恋愛関係に発展するのが、菜穂子。
かつて輸送列車の上で偶然の出会いをしてから数年後、
再び会った彼らは恋に落ちる。
二郎は菜穂子との結婚を決意し、彼女の父親にそれを申し出るが、
菜穂子は重度の結核を患っており、二郎と結婚の約束をした数日後に喀血してしまう。

ちなみに二郎が落ち込んだ時、彼が師と仰ぐイタリア人の飛行機製作者
カプローニが度々夢の中に登場するのだが、萬斎うんっめええ
萬斎のやたらと気迫とカッコ良さに満ちた声の隣で庵野二郎が佇むんだが、
この対比がまた笑……いや、良く出来ている。
著名な飛行設計士として既に自分の地位を確立していたカプローニと、
まだ設計士としては半人前でふわっふわしている二郎。
飛行設計の知識はありながらも、
目の前で起きている戦争のことすら理解出来ていない二郎に対し、
既に人の世が何たるかを知ってしまっているカプローニの存在感は絶大だった。

それから、最後まで謎のドイツ人だったカストルプ。
戦争の記憶も時が経てば忘れてしまう、と飄々と言い放った彼に、
駿がこの映画で言いたかったことの真髄が見えた気がする。

戦争は多くの人を死に至らしめた、二度と起きてはならないもの。
その事実を知りながらも、他国との緊張の中で今一度戦争の必要性を唱える人も、
この日本国内に少なからず存在する(と思う)。

……色んな立ち位置や考え方はあるけれど、個人的にはどんな状況であれ、
寿命的に終わりが見えている人々が後世代を巻き込む発言をしちゃいかんでしょ。
駿にしろ某元首相にしろ、対外的な発言の前にもうちょっと後世代と会話してもらえんだろうか。
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話が逸れたけど、映画自体は大人向けの良質なフィクション(半ドキュメンタリー)でした。
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樹海のふたり [映画]

日本人たるもの、一生に一度は訪れたい場所。富士山。
その傍に広がる広大な森は『樹海』と呼ばれ、
毎年多くの自殺志願者が赴く場所となっている……。

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てなワケで、樹海のふたり。
インパルスのコンビが主演とは言っても、
正直長らく地上波とオサラバしている身としては
GEININSAN?くらいの認識しかない。
しょうがないじゃない。WOWOWの3チャンネルだけで生きてけるんだもの。

まあ、そんなことは置いといて。
あらすじとしては、TV局に勤める下っ端Dの竹内・阿部が
ドキュメンタリーのネタ欲しさに飛びついたのが「樹海の自殺志願者を止める」こと。
樹海に入り、自殺寸前の人間に声をかけて思い留まらせることで、
『樹海』という場所のリアルとお涙頂戴物語をお茶の間に届けようというもの。

しかし、現状はなかなかうまくいかない。
自殺志願者を見つけるだけでも一ヶ月かかり、
ようやく見つけたと思ったら、目の前で逃げられ、
掴んだネタを逃してしまう。
やっとの思いで見つけた自殺志願者。
「母親を殺してきた」とのたまうその男をうな重一杯で樹海から連れ出し、
送った先は警察署。

「裏切り者!」と罵声を浴びせてくる男の姿に、
阿部の中に一つの疑問が沸いてくる。
どん底の生活の中で、男は死を願っていた。
しかし、自分達の行ったことは男の生命を救う一方で、
彼を再びどん底の生活に突き落とすことになる。それで良かったのか……と。

*****
こんな感じで書くとかなりのどシリアス展開か、と思いきや、
要所要所にコメディの要素も挟んでくるので、割と楽に観ることが出来る。
阿部が宿泊先のホテル職員のおばちゃんの豊胸に見とれつつも、
台詞だけはシリアスぶっこいてるのも結構笑えた。

それにしても、二人の演技がかなりナチュラルで上手い。
最初は竹内役の板倉が若干棒読みかな……と思っていたけれど、
後半になって、仕事でのクールな一面と、
自閉症の息子を抱える家庭での寡黙で穏やかな父親の像との対比が
非常に上手く浮き彫りになっていた。
そして阿部役の堤下もすごく自然体で好感が持てた。

しかし、個人的に一番観て頂きたい点としては、
エンクミが吃驚するほどに美女。
今の彼女がショムニに戻ったら、確実に高島礼子がかすむ。

キャストの件はさておき、物語の展開も、
樹海のドキュメンタリーを撮るという視点のみならず、
下っ端Dのその日暮らしな生活や、テレビ局ならではの縦割社会、
竹内家の視点から、自閉症の子どもとの関わり方や家族ならではの悩み、温かみ、
阿部のおばちゃんとの色恋(笑)や男やもめの父との難しい関係性など、
僅か二時間ばかりの上映時間だというのに、それぞれの人生に対し、
非常に丁寧に撮られていた作品だった。

芸人に興味がある方も無い方も、
等しく色んなものを持ち帰ることの出来る“小粒の良作”。
もちろん『樹海』という場所に興味のある方にとっても
大いに楽しめる映像となっておりました。

ただ、残念なことに、
私が観たユーロスペースでは上映中三回ほど映像が飛んだんだよね。
しかもラストのすごく良い場面で飛びよった(汗)。
ユーロのスタッフさんに↑の件を告げたら、
ごめんなさいって謝ってくれて、招待券をもらえた。
時間ある時にもう一回観に行くつもり。
でも、申告したの私だけ?他の人は何も言わずに帰ってたみたいだし……

映画に多く接することの出来る地域の人って、
一作品に対してあんま愛着が湧かなくなるもんなんかしら?
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イノセントガーデン(ネタバレあり) [映画]

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ミアの自慰シーンなんぞ観ながら、そういやこの監督割とエロい描写だったわと思い出したり。
……あ、ブラックスワンのスタッフだからか。なんか納得。

監督はパク・チャヌク。
祖国・韓国では『復讐三部作』で名を挙げた監督であり、
このうちのラストを飾る『親切なクムジャさん』は私の中でアジア映画のベスト3に入る。
映像の絵画的描写もさることながら、クラシックを重用した素晴らしい心象風景の展開、
更に美しい画面の割に暴力的描写が比較的多いのも、この監督の持ち味でございましょう。

ただ『復讐三部作』の後、なんかプッツンしてしまったのか、
『サイボーグでも大丈夫』の何が大丈夫なんか知らないヨーデル三昧のコメディ映画
赤い頭の女がひたすらに不快な『ミスにんじん』(脚本)、
ホラーの筈がどうしてこうなった的どたばたコメディ吸血鬼映画の『渇き』と、
近年の彼は非常に残念でございました。

その彼がケツ顎(すまん)ミア嬢と永遠の美女、二コールを従えて新作を撮るというのだから、
一体どんなものになるのかと色々とハラハラドキドキの心境で待ち望んでいた。
公開から随分経った今ようやく映画館に足を運んだのは、
別段チャーリーがブサメンだったから躊躇していたという訳ではない。
や、本当はイケメンなんだろうけれど。なんか……あの笑み苦手なんだよな……

さて、内容。
ミア嬢演じるインディアは男好きの母、イヴリン(二コール)に反感を持っている。
大好きだった父の逝去後、彼女が他の男に直ぐ目移りする様子が気に入らない。
そんな彼女の前に、突然叔父だと名乗る人物が現れる。
チャーリーと名乗るその男はイヴリンに近付きながらも、
インディアに対し「友達になりたい」と言い、少しずつ距離を縮めていく。
学校では異性同級生の視線すら嫌悪するインディアだが、
自分ですら気付かないうちに、次第にチャーリーとの接触を望むようになっていく。

ある晩、イヴリンとチャーリーがキスをするのを見てしまったインディアは、
ショックで家から飛び出し、同級生の元へと逃げる。
同級生の少年を人気の無い森へと誘うインディア。
少年とキスを交わした際、思いがけず“血の味”を知ってしまったインディアは、
自分の中に妙な高揚感が沸き上がるのを感じる。
ヤバいと思い、インディアは少年から逃げ出そうとするが、
少年は彼女の異変も知らずにそのまま彼女を無理やり抱こうとする。

抵抗するインディアの向こうで、森の木の陰からチャーリーが姿を現す。
そして彼はズボンのベルトを引き抜くと、そのまま少年の首にベルトを掛け、
絶命させる。

―以下、ネタバレありの結末へ↓









インディアの苗字が『ストーカー』なので、てっきりこれも吸血鬼モノかと思っていたら
(ブラム・ストーカーから取ったものらしい↑)
シリアルキラーの話だった。
冒頭の“大人になる”“束縛から解き放たれる”というのは要するに
インディアが父親の“枷”から解放されるという意味であり、
(注:インディアの父は早くからインディアの殺人鬼としての素質を見抜いており、
狩りに連れて動物を殺させることによって、殺意が人間に向かないようにしていた)
その素質を開花させる→人殺しの味を覚えるということ。

チャーリーが「友達になろう」と言ったのは、彼自身もまた殺人鬼の遺伝子を持っており、
その仲間として自分と同じ遺伝子を持っていると思われるインディアに近付いた。

面白いのが、ここでチャーリーとイヴリンの心境が語られるという点。
チャーリーは昔、自分の殺人衝動に耐え切れず、
弟を生き埋めにして殺した過去を持つ。
にもかかわらず、その事実を知る兄や父に自分を愛してくれと懇願する。

一方のイヴリン。
男に依存することでしか生きられない彼女は、
急速に仲良くなったチャーリーと娘の様子に「殺したい程憎い」と呟く。
さて、その娘はどうか―と言うと。

逃避行の前座として、イヴリンを殺害しようとするチャーリー。
インディアに「早く見に来いよ!」と急かすチャーリーの前に、
冷静な面持ちのインディアが現れる。
その手には銃。
浮かび上がる回想。銃で鳥を狙うインディアと、その傍らで的確なアドバイスを行う父。
父のアドバイスに従い、引き金を引くインディア。その先に居たのは―


まとめ。
パク・チャヌク監督。復活、おめでとうございます。
美しくて醜く、繊細でありながらも暴力的で猛々しく、そして図太い。
シリアルキラーの話というだけでなく、思春期女子の心の葛藤も同時に描いている巧妙さ。
本当に素晴らしゅうございます。
あと、ラストでようやくチャーリーがブサメンで良かった、と納得しましたわ。
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The Great Gatsby [映画]

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トビー・マグワイア。
『アイスストーム』や『サイダーハウスルール』などの
“小粒ながらも秀作”な作品に出続けた後、スパイダーマンシリーズで一気にブレイク。
映画ファンからアメコミファンまで広くその名を知らしめることとなる。

レオナルド・ディカプリオ。
端正な面差しからアイドル俳優として多くの女性ファンを獲得、
『ロミオ&ジュリエット』や『タイタニック』などで名を馳せた後は、
『ディパーテッド』や『シャッターアイランド』などで確かな演技力を磨く。

この二人が親友関係。
今でこそ普通に受け入れられてるけれど、十年ほど前、
当時のアイドルディカプリオにヤられていた友人に言わせれば、
「え?トビーって誰(笑)」なリアクションだった。

ありがとう、スパイダーマン。 ありがとう、サム・ライミ。

……まあ、それはどうでもいいとして、
『ボーイズライフ』『あのころ僕らは』ぶりの親友同士の共演は、
まさに二人が歩んできた道の違いを表しているような配役でありました。
バズ、これ意図的にキャスティングしたよね(確認)?
絢爛豪華な人生を歩んでいるかに見えるディカプリオのジェイ・ギャツビー。
それを傍から友人のような距離感でもって見守る隣人のトビー=ニックは、
まさに親友の成功を傍から眺めていたリアルトビーの姿勢にもダブる。
そのため、劇中の「今回も傍観者だった」という台詞の重いこと重いこと。←邪推
バズ、これ意図的にキャスティング(以下略)

内容は有名な話過ぎるので割愛。

バズ作品ならではのダンスシーンの絢爛豪華さや絵画的な映像美は今回も健在だったけど、
残念なことに、上映に先行して売り出されていたサントラを手にした身としては、
GotyeとSiaの曲がエンドクレジットだけなのが頂けなかった。
全体的な構成としては、前作『オーストラリア』や『ロミオ&ジュリエット』に見られた
やり過ぎ感はさほど感じられなかったけれど、
楽曲の活かし方は『ロミオ&ジュリエット』に劣ると思う。
個人的に『ロミオ~』はオチからのダークなEXIT MUSICへの流れ、
そしてその後の何とも言えない余韻が素晴らしかった訳で、
要するに、RADIOHEADが素晴らしかった(笑)。
ラナ・デル・レイのメインテーマも折角の良曲なのに、
いまいち本編で活かされきれていなかったので、どうせならアレが締めでも良かったと思う。

誰もが知る有名な作品の映画化、というだけでなく、
キャストや音楽の面でも一粒で二度三度美味しい映画でございました。
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一代宗師(グランド・マスター) [映画]

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久々の王家衛。
恋する惑星でアホな二枚目のトニーにハマり、
ブエノスアイレスで妙な存在感を醸したチャン・チェンが気になり、
2046で別嬪のチャン・ツィイーにヤラれた私としては、
是非とも観に行かなくては……と公開初日鑑賞。

いやあ、カッコ良かったわ。
馬三役のマックス・チャン(笑)。
なんか主演陣の中でこの人だけ妙に技のキレが違うと思ってたら、
ガチで武術やってた人なのね。
元々は裏方でアクション指導してた人らしいので、
今後も超期待ですわ。
面もイケメンだしな。
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さて、内容。
時は1930年代の中国。
八卦拳の宗師である宮(ゴン)は中国武術の達人として名を馳せてきたが、
そろそろ若手に花を持たせてやろうかの、と引退を決意する。
中国武術の頂点に立つ宮が後継者に選んだのは、以下の三人。
詠春拳の宗師である葉問(イップマン)。
一番弟子の馬三(マーサン)。
実の娘で、奥義六十四手を受け継ぐ若梅(ルオメイ)。

我こそは、と名乗りをあげたイップマンがまずゴンと対決するが、
「この餅を手刀で切れ」という
まるで某ジャンプに出てくる師匠のようなことをのたまうゴン。
イップマンは「師匠は中国いちじゃん。でも俺は世界いちになりたいじゃん(超意訳)」
口では言いながらも、あっさり手刀で餅をカットするツンデレぶりを披露する。

そのツンデレに腹を立てたのが、娘のルオメイ。
よくもウチの親父様を倒してくれたな、とイップマンに対決を申し込み、
その素晴らしき奥義で対戦するも、
うっかりなんか良い感じになってしまう。
ちなみにイップマンはこの時、妻子持ち。

まさかのイップマン不倫フラグに動揺する観客。
イップマンとルオメイが愛と闘志を秘めた謎の文通を交わしている間に、
まさかのマーサンによるゴン殺害計画遂行。

ここでもまさかのジャンプルール発動。
ジャンプによる掟:師匠は弟子に殺害される運命にある。 ←偏見

無論、ルオメイがジャンプルールに共鳴出来る訳もなく、
父の仇を討つため親類縁者を呼び寄せてみたが、逆に運命を受け入れろと諭される始末。
勿論アーマードコアな連中に共感できる筈もなく、
ルオメイは「私がルールよ!」とばかりに単身マーサン討伐に乗り込む。

一方、イップマンは金の工面に困っていた。

***
大体、これが中盤までのあらすじ。
活躍度から言うと、
ルオメイ6:イップマン3.5:カミソリ0.5
チャン・チェン(カミソリ)率少ねっ!
個人的にはチェン>>>ツィイー>>トニーの順で好きなので、
結局謎の理髪師で終わってしまったチェンの登場場面が少なかったのは残念だった。
八極拳ももっと観たかったし。

全体的にアクション映画としては物足りなく(特に葉問)、
人物描写の映画としてはまあまあ。
まあ、アクションはどうしてもドニー・イェン版と比べちゃうからなぁ……。
映像美は相変わらず絵画的なセンスで最高。
あと、梅林茂のサントラは買いです。
ギャツビー含め、今年必携の一枚になりそう。
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俺俺(やんわりネタバレあり) [映画]

いや、これ一人死んでるよね?!

なんだろう。出だしから謎だったけれど、最後まで謎のまんまだったというか。
以下、おさわり程度に序章部分を↓

主人公の永野均はプロカメラマンを目指していた、ごく普通の青年。
プロのカメラマンになりたいと思うも「自分には才能がない」と思い込み、何もせず、
今はなんとなくエ○ィオンの契約社員を続けている。

キモイ上司(加瀬亮)にいびられながらも、
謎のハイテンション女子社員(ふせえり)に蹴られながらも、
なんとな~く日々を過ごす均。

ある時、ロッ○リアで事故的に手に入れた他人の携帯を元手に、
携帯の持ち主の母ちゃんに俺俺詐欺をしでかす。
彼女から90万円を巻きあげた均は、その直後、
見知らぬ人間が家の中にいるのを発見する。

「誰?え?誰?」と思う間もなく出てくる人物。
「大樹、あんた大丈夫?」と問う妙齢の女性は、
実は均が金を巻き上げた『大樹』という男の母親だった。

彼女に実の母親のように接され、均はパニくる。
実家に帰ってみると、なんと自分そっくりの人間が家に住んでおり、
生みの母親である筈の『マサエさん』に
「あんた誰!?警察呼ぶわよ!」とまで言われてしまった。

以下、感想。
チラシがアレだから相当数の『俺』が出てくるもんかと思ってたけど、
実際出てきたのは十人くらい?
それでもよく演じ分けで来ていたと思う。亀梨さん、パネエっす。
だが歪みねえ私的には
序盤で白バイに跨って現れた松尾スズキの方が
破壊力半端ねかったけど。
この方はがっつり出てるより、こういう一瞬のチョイ役で全てをさらってくような役の方が好きだわ。
と、ソロ講演のチケットを取れなかった悔しさを、ここでぶちまけてみる。

さて、内容と言えば、
何で俺が増殖したかって言うことに関しては、全く説明は無く。
更に第二の俺である『大樹』の正体についても???で終わってしまった。
原作はその辺、ちゃんと言及してんのかしら。

まあ、濃ゆいキャラと亀梨の頑張りを観る映画ではあったけど、
サスペンスかと問われると、
個人的にはラノベ仕立てのSFと言った方が良い気がする。


俺俺



俺俺図鑑 亀梨和也 in 映画

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The WE and The I [映画]

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お調子者のマイケルはいつも悪ガキどもとつるんでる。
学校を辞めたテレサにちょっかいを出すけれど、
本当はさびしがりやで、誰かと一緒に居ないと気が済まない。

一か月前に学校を辞めたテレサ。
マイケルとは幼馴染みだけれど、皆の居る前では
ひどい悪口をぶつけてくる彼が許せない。

クールでスタイルの良いレディ・チェン。
親友だけど、いまいちぱっとしないナオミを正直見下していて、
内心彼女のことを「オバさんっぽい」と思ってる。

集団の中の自分。
集団の外に居る自分。
その二つを使い分けて生きる、ブロンクスの少年少女たち。

バスから降り、あるいはバスの中に取り残されることで、
集団の輪から抜け出すことに成功した彼らは
ようやく皆の前で“装っていた自分”を脱ぎ捨てる。

友人たちが下車し、バスの乗客が数えるほどになったところで、
マイケルは孤高の少年・アレックスに近付く。
気になっていたけれど今まで話しかけられなかったと
アレックスに語るマイケル。
一方、アレックスは気さくに話しかけてこようとするマイケルに対して、
クールに言い放つ。
「この一年間、いやこの一時間の間にお前が他の人間に対して
どんなひどいことをしたのか。
それを知ってるから、お前と打ち解けようとは思わないんだ」

***
これを観て思ったのが、アメリカも日本もそう変わらないな~ってこと。

社会人になったら属するコミュニティも一つだけじゃない。
だから職場、家庭、プラベと色んな場所に自己責任で出向いて、
そんでもって付き合う人間を自己責任で取捨選択できる。
(職場はそうでもないけど・笑)

でも学生の頃はコミュニティが家(内)、学校(外)に限られてる。
だから学校のメンバーに嫌われるということは、
自分が外の世界で認められないということに繋がる。
だから好かれる相手を選んで友達になったり、
自分の本心じゃない言葉を言って、周囲に溶け込むように努力する。
たとえ、それが誰かを傷付ける結果になったとしても。

アレックスが飄々と居られるのは、
既に彼が学校・家の他に職場という場所に身を置いているからなんだろう。
たとえ学校で除け者にされたとしても、職場に身の置き所があり、
なおかつそこで自分と関係を持つ人間がたくさん居るなら、
学校というコミュ場がいかにちっさくてバカげたものかを理解しているに違いない。
だからこその“オトナの余裕”なんだろう。

こう考えると、
学校っていうちっぽけなコミュ場の中にもかかわらず、
命を断ってしまうような子は外に繋がりを求めることは出来なかったのかと、
ちょっとこの映画の本筋とは関係のないことを考えてしまった。

この作品をリアルこの年代の子に見せたら、どう思うんだろ?
そんな好奇心を残してくれる映画だった。
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