風立ちぬ(ネタバレあり) [映画]

公開初日の土曜ということもあり、
さぞかし家族連れが多いんだろう…とか思いきや、
客層のほとんどは成人男子でした。

事前情報から飛行機マニアには堪らん内容と聞いていたこともあり、
来ていた年齢層もぱっと見二十代後半~三十代前後くらい?
たまたま隣のシートに座ったのが父娘ペアだったけれど、
娘っこ、始終退屈そうにポップコーンぽりぽりしてたし。

さて、肝心の内容…の前に例の主人公の庵野声だけど、
そんな違和感無かった。
ちなみに主人公の堀越二郎はこんなん↓
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幼少期(声変わり前)は自前の飛行機を乗り回し、
周囲の女子どもの黄色い歓声を浴びながらも、ガキ大将を背負い投げする猛者であった。
そんなハイスペック少年が『近眼』というコンプレックスを元に、
飛行操縦士→飛行機の設計士へと転身したことにより、彼の内に秘めたオタク要素が大爆発。

結果として爽やかイケメンの風貌でありながら、口を開けばもろにオタク、という
ジブリでも類を見ないタイプの主人公が出来上がる。
個人的に駿が庵野を起用したのは、
ジブリの爽やか絵では表現出来なかったオタク要素を声で補填したのではなかろうか。
これ↑観た方ならきっと賛同して下さると思う。
一応言っておくが、基本的に庵野除いた他の役者声優は非常に上手い。
ヒロイン瀧本、二代目ムスカ、じゃない、服部役の國村の演技も素晴らしかったが、
西島すげえうめえ。
こんなにうまいなら、なんで大河のしゃがれ声があんな……いや、何でもないっす(自重)。

さて、内容に関して言うと、
堀越二郎という人物史に堀辰雄の恋愛小説『風立ちぬ』をミックスさせた形。
非常に乱暴な言い方をすると、
設計図と野郎に囲まれた職場で日々過ごす主人公が美女をゲットする話(笑)。
そこに駿なりの『戦争』に対する解釈、戦争に参加した一般人に対する解釈が刻まれる。

二郎は戦闘機(零戦)を作った人物ではあるけれど、敵国との戦争を望んだのではなく、
純粋に技術者として貧乏な日本で大好きな飛行機を作りたかった。
本当は戦闘機ではなく、客を乗せて飛ぶような輸送型の飛行機も作りたかったが、
時代がそれを許さず、夢を見るのみに留めている。
この二郎と恋愛関係に発展するのが、菜穂子。
かつて輸送列車の上で偶然の出会いをしてから数年後、
再び会った彼らは恋に落ちる。
二郎は菜穂子との結婚を決意し、彼女の父親にそれを申し出るが、
菜穂子は重度の結核を患っており、二郎と結婚の約束をした数日後に喀血してしまう。

ちなみに二郎が落ち込んだ時、彼が師と仰ぐイタリア人の飛行機製作者
カプローニが度々夢の中に登場するのだが、萬斎うんっめええ
萬斎のやたらと気迫とカッコ良さに満ちた声の隣で庵野二郎が佇むんだが、
この対比がまた笑……いや、良く出来ている。
著名な飛行設計士として既に自分の地位を確立していたカプローニと、
まだ設計士としては半人前でふわっふわしている二郎。
飛行設計の知識はありながらも、
目の前で起きている戦争のことすら理解出来ていない二郎に対し、
既に人の世が何たるかを知ってしまっているカプローニの存在感は絶大だった。

それから、最後まで謎のドイツ人だったカストルプ。
戦争の記憶も時が経てば忘れてしまう、と飄々と言い放った彼に、
駿がこの映画で言いたかったことの真髄が見えた気がする。

戦争は多くの人を死に至らしめた、二度と起きてはならないもの。
その事実を知りながらも、他国との緊張の中で今一度戦争の必要性を唱える人も、
この日本国内に少なからず存在する(と思う)。

……色んな立ち位置や考え方はあるけれど、個人的にはどんな状況であれ、
寿命的に終わりが見えている人々が後世代を巻き込む発言をしちゃいかんでしょ。
駿にしろ某元首相にしろ、対外的な発言の前にもうちょっと後世代と会話してもらえんだろうか。
main_img.jpg
話が逸れたけど、映画自体は大人向けの良質なフィクション(半ドキュメンタリー)でした。
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